『第4回エル・システマ子ども音楽祭 in 相馬』

(FESJ/2018/Mariko Tagashira)

“子どもたちによる子どもたちのための音楽祭”という精神のもとに誕生した『エル・システマ子ども音楽祭 in 相馬』。生き生きと歌ったり奏でたりする子どもたちの姿は、東日本大震災からの復興とも重なります。なかには、今春から宮城の大学で音楽を専攻し、「将来は地元へ戻って後輩たちに教えたい」という子も出てくるなど、 “子どもから子どもへ”という形でのポジティブな循環が生まれつつある相馬——。時間をかけてじっくりと醸成された音楽の力が伝わってくる音楽祭となりました。

1日目:仲間と共創するハーモニー

最初にステージに登場したのは、相馬市立中村第一中学校、中村第二中学校、向陽中学校吹奏楽部の部員たち。普段はコンクールでのライバル同士ですが、子ども音楽祭では合同ステージをつくりあげる仲間。3種類の異なる制服姿で、それぞれの学校の演奏カラーを持ち寄り、「彼こそが海賊〜映画パイレーツ・オブ・カリビアンより〜」と「Paradise Has No Border」を披露しました。

「相馬子どもオーケストラ」は、今年も大曲に挑戦。グリーグの「ホルベアの時代から」、ムソルグスキーの「展覧会の絵」、ベートーヴェンの「交響曲第7番イ長調作品92」を演奏しました。「いつもより大変だった。でも、あきらめないことが大切」と弦楽器指導にあたる須藤亜佐子先生。コンサートミストレスをつとめた花音さん(高3・バイオリン)は、「隣に仲間がいると安心して弾ける」と話してくれました。

アンコールの「ラデツキー行進曲」は、自然に身体が動きだすような高揚感のある曲。客席も子どもたちの演奏に合わせて手拍子を大きくしたり小さくしたり、まさにステージと客席がまさにひとつとなって、音楽を分かちあいました。

2日目:総勢200名の大ステージへ

(FESJ/2018/Mariko Tagashira)

「相馬子どもコーラス」の歌声で始まった2日目。「唱歌の四季」、「『五つのこどもうた』より」、「遠足」という新しいレパートリーを特別友情出演の南相馬市立原町第一小学校合唱部の10人と一緒に披露しました。「『五つのこどもうた』より」は、歌の交流を深めてきたコロンえりかさんとの共演。そしてアンコールは、あの「鉄腕アトム」。客席は、10万馬力の小さなアトムたちを応援する手拍子で沸きました。

「相馬子どもオーケストラ」は、チャイコフスキーの「弦楽セレナード ハ長調作品48」を演奏。子どもたちの純粋なエネルギーがあふれる演奏に心を震わせた方がたくさんいらしたようです。

フィナーレは、「相馬子どもオーケストラ&コーラス」と「相馬合唱団エスポワール」による恒例の大ステージ。未就学児から80代まで総勢200名を超える音楽家たちが「アヴェ・ヴェルム・コルプス」、「フィンランディア」、「ハレルヤ」を心をこめてお届けしました。相馬という土地のエネルギーを感じさせる音楽。子どもから大人へ。大人から子どもへ。そして子ども同士で。いろいろな方向へ広がる音楽の力に、客席からブラボーの声が次々と飛びました。

(FESJ/2018/Mariko Tagashira)

『エル・システマ子ども音楽祭 in 相馬』は、地域の人々はもちろんのこと、遠くにいても子どもたちの健やかな成長を願う人たちへ広く開かれています。今年も無事に開催できたことに喜びを感じるとともに、開催へ向けてご尽力くださった方たちへ心より御礼申しあげます。

浅岡先生、長い間ありがとうございました

エル・システマジャパン音楽監督(オーケストラ)として5年間にわたり、「相馬子どもオーケストラ」を精魂こめて育ててくださった浅岡洋平先生が、『第4回エル・システマ子ども音楽祭 in 相馬』を最後にエル・システマジャパンの仕事を終えられました。

ちょうど5年前の春、相馬では小学校を卒業した子どもたちが、中学校に器楽部がないためにバイオリンの練習を継続できずにいました。そこで指導アドバイザーとしてはじめて相馬を訪問したのが、浅岡先生でした。「弦楽器を弾くための身体の使いかたをおぼえよう」子どもたちにそう語りかけながら、浅岡先生は自らバイオリンを構えてお手本を示してくださいました。

「音楽を知ること、音楽を身体の中に取りこむことは素晴らしい。偉大な作曲家たちが人間の中に追求した『美』を追体験できる。その感覚を子どもたちにも体験してほしい––」浅岡先生には音楽の力を伝えずにいられないという内側から発せられる強い衝動、情熱、そして哲学がありました。被災地の復興支援として立ちあがったエル・システマジャパンの活動ですが、浅岡先生には「被災地だから」という気持ちはあまりなく、むしろ誰にも分け隔てなく、音楽が人間を満たしてくれるものを共有したいという大きな愛があったように感じます。

(FESJ/2018/Mariko Tagashira)

「みんなと一緒に過ごしたどの時間も愛おしい」音楽祭終演後のステージで、そう子どもたちに伝えた浅岡先生。楽しいことばかりではなく、悩んだこともいろいろあったと想像します。でも、「相馬子どもオーケストラ」の誕生からずっと一緒にハードルを超え、みんながここまで成長したことに深い慈しみとリスペクトを感じさせる最後のご挨拶でした。ここから先は子どもたちの力で走ってゆける。そう判断したから、浅岡先生はこのタイミングで退かれる決心をされたのかもしれません。

「相馬子どもオーケストラ」に惜しみない愛情を注ぎ、試行錯誤を重ね、エル・システマジャパン音楽監督として多岐にわたる活動に貢献してくださった浅岡先生に、エル・システマジャパンスタッフ一同、心より感謝を申しあげます。先生が大切に育ててくださったものは、きっとこの先も発展をつづけます。

 

(文:仲川美穂子 エル・システマジャパン広報官)

主催: 一般社団法人エル・システマジャパン

共催: 相馬市、相馬市教育委員会

後援: 福島民報社、福島民友社、河北新報社

協力: 福島県吹奏楽連盟相双支部、オアシス楽器店、毎日民報相馬販売センター

助成: 平成29年度文化庁 文化芸術創造活用プラットフォーム助成事業

▼相馬子どもオーケストラアンコール「ラデツキー行進曲」

▼相馬子どもコーラスアンコール「鉄腕アトム」

▼出演者全員でのフィナーレ

メディア掲載(下線部をクリックしてご覧ください)

・ONTOMO エル・システマジャパン 現地レポート

「奏でよ、そして闘え」 未来を切り拓く相馬子どもオーケストラ&コーラス

・ONTOMO エル・システマジャパン 現地レポート(後編)

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・ミュージックトレード 5月号 

子どもたちの笑顔が地域社会の活力に 

音楽で夢と未来を紡ぐ相馬子どもオーケストラ

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