大拍手に包まれた「第5回エル・システマ子ども音楽祭 in 相馬」

春の訪れを感じながらも一日の気温差が大きい3月下旬、「第5回エル・システマ子ども音楽祭in 相馬」が開催されました。年に1回、相馬で音楽を学ぶ子どもたちが一堂に会する本音楽祭。今年は、クラウドファンディングの成功で、福島入りが実現した英国・オックスフォード大学管弦楽団がゲスト出演し、相馬子どもオーケストラ&コーラスの子どもたちと、それぞれの故郷で愛される曲「相馬盆歌」「威風堂々」を披露し、会場は大きな拍手に包まれました。

1日目:共に創り出す音楽

最初にステージに登場したのは、昨年に続き、中村第一中学校、中村第二中学校、向陽中学校の吹奏楽部のみなさん。ふだんは各校15名前後で練習に励んでいますが、当日は学校を越えた48人の合同バンドとして、『ロマネスク』『ジャパニーズ・グラフィティⅧ~ウルトラ大行進!~』を披露しました。「演奏するときは、まわりと音を合わせること、音程をとること」を大切にしているという中村第二中の冨田紗那さんと向陽中の渡邊祐衣さん。りっぱに音楽祭のオープニングを飾ってくれました。

©️FESJ/2019/Mariko Tagashira

続いて、相馬高校・相馬東高校吹奏楽部合同バンドが登場。13の楽器から成る68名の合同バンドが音合わせをしたのは、当日が初めて。しかし、同じ中学校だったり、地域のバンドフェスティバルなどで見知った友だちもいたりと、面識のある2校のみなさん。マーチ『エイプリル・リーフ』、

『Make Her Mine -Brass Rock-』 を演奏しました。「1曲目と2曲目が、全く違う曲。お客さんが楽しんでくれているか気になった。拍手が長くて、アンコールも入ってうれしかった」(相馬東高等学校 吹奏楽部部長 菅野晃平さん)、「中学生の子たちが今日の演奏を聴いて感動して、高校生かっこいいなと思って、入部してくれたらうれしい」」(相馬高等学校 吹奏楽部部長 阿部かなみさん)。合同バンドの一部メンバーは、相馬子どもコーラスと新実徳英『3つのアヴェ・マリア』よりを披露し、美しい音色と歌声を響かせました。

休憩後は、合唱の部へ。「歌って踊れる」ユニークな相馬子どもコーラス。歌う広場と題して、『歌えばたのし』から『元気に笑え』まで6曲を歌い上げ、合唱組曲『日曜日~ひとりぼっちの祈り~』や『日記のうた』を披露しました。

 

「曲の雰囲気が暗いものもあって、今までより表現がむずかしかった」「なじみのない音の重なりがあり、音程も4つあって複雑でむずかしかっただけに、発表を終えて、達成感を感じている」(相馬子どもコーラス 宗像亜弥さん)「コーラスのふりつけがあるほうが、部分と部分のつながりができて曲のイメージをつかみやすく、お客さんにも伝えやすい」(相馬子どもコーラス 森田紗衣さん)と、ステージを終えたふたりは、興奮冷めやらぬ様子で話してくれました。

©️FESJ/2019/Mariko Tagashira

ゲストの声楽家のコロンえりかさんが、エル・システマ発祥の地ベネズエラの歌「平原の歌唄い」などを紹介しました。会場のみなさんに、ジェスチャーを交えて一緒に歌い、参加することを呼びかけると、会場はにぎやかな空気に。笑い声や笑顔を感じながら、会場全体で音楽を楽しみました。

2日目:観客に、故郷に、思いを寄せて230名が登場

2日目のステージは、相馬子どもオーケストラの弦楽合奏からスタート。客演指揮者の河合尚市先生の指揮のもと、バイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバス61名が、ホルスト『ブルックグリーン組曲』、レスピーギ『リュートのための古風な舞曲とアリア』より第3組曲、モーツァルト『交響曲第35番≪ハフナー≫』を披露し、華やかな音色を奏でました。

特別出演をしたのは、オックスフォード大学管弦楽団。「音楽を通してできることをしたい」の思いのもと来日し、クラウドファンディングによって福島訪問が実現しました。ホルスト 組曲『惑星』より≪木星≫と、ベートーヴェン『ヴァイオリンと管弦楽のためのロマンス第2番』を、重厚で奥行きのある音色で演奏しました。また、震災後に被災された方々を想って作曲され、世界中の金管奏者に奏で継がれたヘルフェルスト『日本に捧ぐ歌[A Song for Japan]』には、会場から、特に大きな拍手と歓声が寄せられました。

フィナーレは、相馬のシニア合唱団エスポワールも加わり、相馬子どもオーケストラ&コーラス、オックスフォード大学管弦楽団の総勢230名が登場!合奏と合唱、重みのあるメロディーや弾むようなリズムから成る演奏に、会場は包まれました。

©️FESJ/2019/Mariko Tagashira

英国第二の国家ともいわれるエルガー『威風堂々』第1番。オックスフォード管弦楽団のみなさん、相馬のみなさんとも、それぞれの故郷に思いをはせながら、心を震わすような音色を響かせ、演奏しました。

最後の曲となった「相馬盆唄」は、相馬で歌い継がれてきた歌。たくさんの手拍子や歌声が会場から寄せられ、郷土の方々に親しまれ、育まれる、相馬子ども音楽祭らしいフィナーレとなりました。会場が一体となったすばらしい時間でした。

©️FESJ/2019/Mariko Tagashira

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ちょうど7年前に、相馬で始まったエル・システマジャパンの活動。スタート当初から参加した子どもたちの中には、この公演をもって卒業する高校3年生の子どもたちもいました。終演後、感想を聞いてみると「おわっちゃったなぁ」と。公演も、子どもとして参加する相馬子どもオーケストラの活動も。活動を重ねる中で、年少者から年長者になり、先輩として指導するようになり、自分のことだけでなく、まわりやパートのことを考えて取り組むようになったとも話してくれました。エル・システマジャパンが取り組む「子どもたち同士で学び合い、成長していく」を実感できる言葉でした。

ご来場くださったみなさま、運営面を含めご支援・ご協賛くださったみなさま、そして保護者のみなさま。

多くの方のご協力によって、「第5回 子ども音楽祭 in 相馬」無事に終えることができました。心よりお礼申し上げます。

(文:浦上綾子 エル・システマジャパンファンドレイザー)

主催: 一般社団法人エル・システマジャパン

共催: 相馬市、相馬市教育委員会

後援: 福島民報社、福島民友社、河北新報社

協力: 福島県吹奏楽連盟相双支部、オアシス楽器店、毎日民報相馬販売センター

平成30年度文化庁 文化芸術創造拠点形成事業