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子どもの成長を感じた瞬間 〜東京ホワイトハンドコーラス編〜

東京ホワイトハンドコーラスは、音からもっとも遠い子どもたち、すなわち聴覚に障害のある子どもたちを中心にした「サイン隊」から始まりました。声で歌詞を歌うのではなく、ろう者の言語である手話を元にして、歌詞の世界をリズム・メロディーに乗せて表現していきます。手話のわかる人たちには、その歌の世界がよく伝わります。また身体から声を出すのと同じように、手の動きや表情に、美しさがあります。

私たちの練習は、歌詞の世界を丁寧に読み解いていくような時間を持っています。想像し、理解し、手話だったらどう表現していくだろう、直訳しない方法もあるな、私はこう伝えてみたとい…子どもたちそれぞれに異なる表現が出てくるのが、とても面白い場面です。次々にアイディアが湧いてくる子、言葉通りの表現をしていく子、なかなか前に出て行かない子と様々です。

今年から入った一人の女の子は、最初はおとなしく、自分の思いをなかなか伝えてくれませんでした。ところが、ベネズエラから来日する「ララ・ソモス」との共演にむけてスペイン語の歌の練習を重ねていったある日のこと、彼女から躍動感に満ちた手歌が飛び出したのです。ベネズエラの手話は彼女が普段使っているものと同じではなく、新しい学びが多かったはずです。しかし、彼女の姿は、楽器や声で言うところの正確に音を拾っていくような表出ではなく、異文化の歌の世界観とリズムを丸ごと自分の中に取り込めたかのようでした。いつの間に…と、非常に驚かされました。子どもたちはすごいなあ。

練習を重ねるに連れ、学校や年齢を超えての手話でのおしゃべりも増えてきました。本当に楽しそうで、うらやましくもある日々です。東京ホワイトハンドコーラスに参加するサイン隊、そして今年から参加している盲の子どもたちを中心とした声隊のメンバーは、いろいろな壁を破っていける子どもたちだと思います。

菊川佳代(東京ホワイトハンドコーラス担当)

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