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多くの皆様の応援、ご参加ありがとうございました!

 「第2回エル・システマ子ども音楽祭 in 相馬」は、2月13日、14日の2日間にわたり福島県相馬市の相馬市民会館にて、相馬市と相馬市教育委員会との共催で開催されました。13日は相馬高等学校と相馬東高等学校の吹奏楽部が合同で、ヴェルディ作曲の歌劇「アイーダ」より第二幕第二場、スーザ作曲の「星条旗よ永遠なれ」などを演奏しました。その後、相馬子どもコーラスが、ハンガリー由来の「三つのわらべ歌」など5曲をハンガリー語で披露した他、相馬に古くから伝わる民謡や「さくらさくら」、「ずいずいずっころばし」、そして「お菓子の歌」より数曲を歌い上げました。また、昨年に引き続き、駐日ベネズエラ大使夫人でソプラノ歌手のコロン・えりかさんを舞台にお迎えして、「被爆のマリアに捧げる賛歌」をはじめとする3曲を合唱しました。

 14日は相馬子どもオーケストラが、バッハ作曲の「ブランデンブルグ協奏曲」、アンダーソン作曲の「シンコペイテッド・クロック」、ベートーヴェン作曲の「運命」、オーケストラ用に編曲された「相馬盆歌」などを披露しました。フィナーレは相馬子どもオーケストラ&コーラスに地元の相馬合唱団エスポワールも加わり、ヘンデル作曲のメサイアより「ハレルヤ」を盛大に大合唱して、「子ども音楽祭」の幕は惜しまれながら閉じました。

 

<東日本大震災から5年>

 相馬市とエル・システマジャパンの「音楽を通して生きる力を育む」事業は、協力協定のもとに2012年にスタートしました。小学校の部活動への支援から始まった活動は拡大し、翌年には市内すべての子どもに無償で開かれた週末弦楽器教室をベースに「相馬子どもオーケストラ」ができました。一方、桜丘小学校合唱部に中学生のOG・OBが参加する「相馬子どもコーラス」も立ち上がり、「相馬子どもオーケストラ&コーラス」としての初めてのクリスマスコンサートが同年12月に開催されました。子どもたちの参加人数は次第に増え、現在オーケストラは90名、コーラスは60名で構成される大世帯となっています。子どもたちは仲間と共に日々の練習に励み、着実に力をつけ、これまでに本国ベネズエラや米国ロスアンゼルスのエル・システマ・ユース・オーケストラと共演したり、東京ドームでプロ野球戦の前に合唱を披露したりと、新しい目標にチャレンジしながら経験を積んでいます。

 東日本大震災からちょうど5年という節目にあたる今年、「子ども音楽祭」は規模を拡大し、2日間にわたって開催されました。相馬子どもオーケストラ&コーラスに、相馬高等学校と相馬東高等学校の吹奏楽部、相馬合唱団エスポワールが加わり、客席は子どもたちの保護者や親族の方たちの他、「音楽を通して生きる力を育む」活動に関心のある地元の方たちや市外からのサポーターの方たちで大変なにぎわいでした。この5年間、相馬の子どもたちがいろいろな思いを抱いてきたことは想像に難くありません。しかし、仲間と一緒に音楽を作り上げる過程やたくさんの支援者たちが見守る「子ども音楽祭」のような場において、子どもたちが自分自身の成長と他者との結びつきを実感してくれたら、本当にうれしいことです。ひとりじゃない、仲間がいる、応援してくれる人がいる、分かち合えるものがある、という気持ちは、子どもたちが自分の手で人生を切り開いていく上で力になってくれると信じています。

 

<相馬という郷土の誇り>

 子どもたちは今回、それぞれコーラスとオーケストラ用に編曲された相馬の民謡に初めて挑戦しました。コーラスの子どもたちは色とりどりの浴衣に着替えて、「新相馬節」、「相馬盆歌」、「相馬流れ山」を透明感あふれるのびやかな声で歌い上げ、故郷の息吹を感じさせてくれました。「相馬流れ山」には相馬民謡全国大会優勝者でもある伏見とみ子さんと尺八の陶正彦さんが参加してくださり、相馬ならではの味わい深い音が紡ぎ出されました。一方のオーケストラも「相馬盆歌」を披露。同じ曲でもコーラスとは異なる趣で相馬の誇る伝統芸能を体現し、聴衆を存分に魅了しました。地域の方々をはじめ、遠方からいらしたお客さまの中には、相馬の伝統芸能の素晴らしさを再認識するだけでなく、新たな形での伝統芸能継承の可能性に目を見張られた方もいらしたのではないでしょうか。

 また、昨年の「子ども音楽祭」に引き続き、駐日ベネズエラ大使夫人でソプラノ歌手のコロン・えりかさんが、今年も相馬子どもコーラスの子どもたちと共に美しい歌声を響かせてくれました。子どもたちの中には、えりかさんが歌う姿に将来の目標を見出した子もいたようです。エル・システマはベネズエラで発祥した教育プログラムですが、現在は世界60以上の国や地域でそれぞれの文化的背景やニーズに合わせた形で実践されています。エル・システマジャパンは国内外・国籍を問わず、子どもたちの生きる力を育んでくれるアーチストの方々を積極的に活動現場へ招聘すると同時に、相馬という地域に根ざしたプログラムを目指しています。

 

<感動のフィナーレから、次のステージへ>

 「子ども音楽祭」の最後の曲目である「ハレルヤ」は、相馬子どもオーケストラ&コーラスの全メンバーに地元の相馬合唱団エスポワールのメンバー59名が加わり、地域の一体化を象徴するような大合奏でした。被災地復興に向けて一昨年に設立された「エスポワール」はフランス語で「希望」を意味します。その名の通り、子どもたちとの希望に満ちた大合奏は会場を明るくたくましく大きく包み、演奏後はスタンディングオベーションで拍手が鳴り止みませんでした。ステージだけでなく、客席までをもひとつに繋ぐ音楽の力、そして、その力を生み出した子どもたちと周囲のエネルギーに多くの人が胸を熱くしたようです。会場には目頭を熱くしてじっと舞台を見つめている方たちがあちらこちらにいらっしゃいました。

 音楽祭は晴れの舞台で華やかですが、そこへ到達するまでに並々ならぬ努力を要します。子どもたちは時には壁にぶつかったり躓いたりしながらも、仲間と一緒に練習に励み、難しい曲も一曲ずつこなしていきます。新しい曲を歌えるようになったり弾けるようになったりすることは、子どもたちにとって喜びであり、自信の源になるようです。「本番で悔いが残らないように、ひとつひとつの練習を大切にしたい」、「友達と一緒に演奏できるのは楽しい」、「演奏後はとても達成感がある」。そんな声が子どもたちから聞こえてきました。その一方で、自分たちを応援してくれている家族の存在もしっかりと心に留めています。「練習の成果を家族に見てほしい」、「お母さんは忙しいのに音楽祭へ来てくれて、うれしい」。そういった言葉を会場の子どもたちは、ごく自然に家族や友達の前で発していました。

 スタンディングオベーションの中で「子ども音楽祭」の幕が下りるまで、実に多くの方々がバックステージで活動を支えてくださいました。子どもたちの練習の送り迎えだけでなく、リハーサルや本番当日の受付、舞台転換、子どもの着替えに奔走してくださった保護者の皆さん、地域で根気強く指導にあたる先生方、東京から相馬まで頻繁に通ってくださる音楽監督の先生やフェローの皆さん、楽器の調子がよくなければすぐに修理してくれる専門家、舞台を滞りなく進行してくれる技術者の皆さん、ボランティアで映像や写真の撮影をしたり、横断幕やポスターを作成してくださったりする方々など、その他にもたくさんの方たちのサポートの力がひとつになり、「第2回エル・システマ子ども音楽祭 in 相馬」は開催することができました。これはまさに、相馬の子どもたちの成長と地域の発展を真摯に願う人たちの情熱によって支えられたイベントです。

 代表の菊川が冒頭のご挨拶で申し上げましたが、今、世界は残念なことに分断されつつあるのかもしれません。インターネットで地球の裏側まで瞬時に繋がるのに、文化や宗教や慣習の違いに起因する感情の溝はなかなか埋まりません。そんな時代に皆が力を合わせて結集し、音楽を通して友達や家族や周りの人たちと繋がり、一緒に感動を分かち合えるということは、とても幸せなのではないでしょうか。

 「第2回エル・システマ子ども音楽祭 in 相馬」の幕は下りましたが、子どもたちの活動はこれからも続きます。皆さま、これからも応援のほど、どうぞよろしくお願いいたします。(文:仲川美穂子、(一社)エル・システマジャパン広報官)

コンサート紹介動画(相馬市公式YouTubeチャンネルより)
コンサートプログラム(下記写真クリックよりPDF版をご覧頂けます)
メディア掲載はこちら(下記紙面写真からオンライン記事にリンク)
福島民友2016年2月14日
福島民報2016年2月14日
*トップスライドショーの写真1〜13番目のクレジットは、FESJ /2016/Toshihiko Ochiai、14〜24番目は、FESJ/2016/Mariko Tagashira

■出演

福島県立相馬高等学校吹奏楽部

福島県立相馬東高等学校吹奏楽部

相馬子どもコーラス

相馬子どもオーケストラ

特別出演:コロンえりか(ソプラノ)、陶正彦(尺八)、伏見とみ子(謡)

コーラス指揮:古橋富士雄

オーケストラ指揮:浅岡洋平

総合司会:林朝子

主催:一般社団法人エル・システマジャパン

共催:相馬市、相馬市教育委員会
後援:福島民報社、福島民友新聞社、河北新報社

協賛:株式会社ヤマハミュージックジャパン
協力:オアシス楽器店

助成:平成27年度文化庁 文化芸術による地域活性化・国際発信推進事業

(c)大杉隼平

(c)Wolf Marloh

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