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エル・システマ子ども音楽祭2017in駒ヶ根

(1~2,4:FESJ/2017/Mariko Tagashira, 3: 駒ケ根市)

『エル・システマ 子ども音楽祭2017 in 駒ヶ根』が10月24日、長野県駒ヶ根市の駒ケ根市文化会館にて開催されました。エル・システマジャパンと駒ヶ根市が「音楽を通じて生きる力をはぐくむ事業」の実施を今年3月に正式に合意してからおよそ半年、はじめて開催された「子ども音楽祭」の会場には、音楽の大好きな子どもたちが大勢集まりました。

「駒ヶ根子どもオーケストラ」の初舞台

第1部では、駒ヶ根市の合唱隊や和楽器隊など8グループがそれぞれ歌や曲を発表。今夏から合計14回のレッスンを重ね、この日を心待ちにしていた「駒ヶ根子どもオーケストラ」の子どもたち25名もデビューを果たしました。ステージ中央に前後2列に並び、エル・システマジャパンの小山先生のリードで弾きはじめたのは、「メリーさんの羊」。ゆっくりゆっくり丁寧に、ひとつずつ確認するようにバイオリンから音を引きだしていきます。

けっして達者ではないけれど、その一生懸命な姿に胸を熱くした方もたくさんいらしたのではないでしょうか。

弦楽器教室に通う高学年の子どもたちは、さらに「10人のインディアン」も披露。毎日バイオリンの練習に励んだという里音さん(小5)は、「本番では思い通りに弾けた。発表を聴きに来てくれたお母さんが『よかった!』と言ったので、うれしかった」と話してくれました。夢夏さん(小1)も「ドキドキした!」と言うものの、はじめての大舞台を楽しんだ模様。「舞台上で目が合ったときに見せてくれた笑顔、控え室に戻って来たときのいつもよりも興奮した様子は、すでに小さな演奏家でした」と小山先生。発表の場を経験した子どもたちからは「もっと他の曲も弾いてみたい!」という頼もしい声も聞こえ、「駒ヶ根子どもオーケストラ」の成長がこれからますます楽しみです。

​©駒ヶ根市

境界線のない音楽

第2部は、ベネズエラより来日した「ララ・ソモス」がゲスト出演。駒ヶ根市は、「東京2020 オリンピック・パラリンピック競技大会」でベネズエラの選手団を受けいれるホストタウンに選出されるなど、ベネズエラとはとても縁のある自治体です。今回初来日した「ララ・ソモス」のメンバーは、「駒ヶ根は自然が豊かで山が美しく、温泉はリラックスできる。それに人が親切」と口を揃えます。「ララ・ソモス」のメンバーは、ほぼ全員がララ州出身。そのララ州はベネズエラのなかでも高地にあり、カカオやコーヒーなどが採れるとても自然が豊かなところです。そんな土地でさまざまな障害を抱える子どもたちの支援プログラムとして、世界初のホワイトハンドコーラスは立ちあがり、さらに「ララ・ソモス」が誕生したのです。

​©駒ヶ根市

「ララ・ソモス」の音楽はともかく温かく、心にじわりと沁みます。メンバーは視覚や聴覚などに障害のある人とそうでない人がいますが、「助けあう」とか「補いあう」といったことを多分意識すらしていないのではないかと思うくらい、自然に行動を共にし、あらゆる場所に音楽を見つけては、その喜びを分かちあっています。そんな彼らが歌い奏でるハーモニーは何のバリアもなく、聴く人の心にやさしく沁みていきます。境界線のない仲間との関係が美しい音楽を生み、その音楽が彼らの関係をまた潤すのかもしれません。

終演後、「ララ・ソモス」の印象を「駒ヶ根子どもオーケストラ」の優李亜さん(小5)に訊くと、「すごかった。障害があったりして大変なこともあると思うけれど、音楽を大事にしているのが伝わってきた」と、きらきらの笑顔。優李亜さんは、いつか「ララ・ソモス」と共演したいそうです。杉本幸治 駒ヶ根市長は「自分が力をもらったようだ」と感動を声に滲ませました。また、セイコウ・イシカワ駐日ベネズエラ・ボリバル共和国特命全権大使は、「駒ヶ根の人がラテンのリズムで自然に体を動かしていたのがとても印象的だった」と感想を述べられました。

『エル・システマ 子ども音楽祭2017 in 駒ヶ根』の最後を締めるアンコールに「ララ・ソモス」が選んだ曲は、「上を向いて歩こう」。日本語でも歌われた歌詞はどこまでもやさしく、そこにいる人たちみんなが心を通わせた証として、雄大な山々に囲まれた駒ヶ根の街に響きわたるようでした。

(文:仲川美穂子 エル・システマジャパン広報官)

▼第二部の演奏動画をご覧いただけます

メディア掲載(クリックしてご覧ください)

・2017年10月25日 長野日報

・2017年10月25日 信濃毎日新聞

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