​第7回 エル・システマ 子ども音楽祭 in 相馬

2022年5月7日、8日

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5月7日、8日の2日間の日程で、「第7回エル・システマ子ども音楽祭 in 相馬」を無事、相馬市民会館で開催することができました。

当初は3月20日、21日に開催されるはずだった音楽祭は、3月16日深夜に発生した福島県沖地震のため急遽延期に。相馬市内には地震の爪痕が色濃く残る中でしたが、その2週間後には延期公演に向けての練習を再開、無事5月に開催の運びとなりました。関係者の皆さまのご尽力、市民の皆さまからの応援・ご支援に心から感謝いたします。

 

今回、2日間で延べ200名がステージに立ちました。このように2日間の日程で、吹奏楽・コーラス・オーケストラのフルステージをお届けできたのは、実は2019年以来のこと。エル・システマジャパン設立10周年の幕開けに相応しい、子どもたちの今ここにしかない思いと音楽に溢れた音楽祭となりました。

1日目:吹奏楽ステージ、コーラスステージ

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相馬市内の各校の吹奏楽部が出演する吹奏楽ステージは、コロナ禍にあって3年ぶりの復活となり、今回は市内の3つの中学校全ての吹奏楽部の参加が叶いました。

相馬市立向陽中学校の23人が「若い広場」(桑田佳祐作曲)を、中村第二中学校の16人が「初心LOVE」(桑原暁・久保田真悟作曲)など2曲を、最後に中村第一中学校の28人が「式典のための行進曲『栄光をたたえて』」(内藤淳一作曲)など4曲を演奏。

日程変更があった中でもそれぞれに5月のステージに向け練習を継続し、素晴らしい演奏を届けてくれた3校の吹奏楽部に温かな拍手が送られました。

3部構成の今年のコーラスステージは、朗読の演出が入った「金子みすゞの詩による七つのタブロー」から始まりました。OGメンバーのあやさんによる朗読と子どもたちの澄んだ歌声で、金子みすゞのかわいらしくも奥深い詩の世界に思わず引き込まれるようなステージでした。

続く第2ステージでは、蓬莱泰三作詞・南安雄作曲の「チコタン」をラッキィ池田さんの振付による踊りとともに披露しました。子どもたちは、意外性のあるストーリー、そして関西弁歌詞での喜怒哀楽の表現に富んだこの難しい曲を、見る者の心に訴えかける迫力をもって歌い切りました。

最後のステージでは、子どもオーケストラの弦楽伴奏で林望作詩・上田真樹作曲の「あめつちのうた」を演奏。前週に行われた東京でのコンサートに続く共演となりました。


今回はコーラスメンバーが弦楽器を囲むような特別な配置にしたことで、歌声と弦楽の音色はさらに溶け合い、より一層息の合った演奏をお届けすることができました。メンバーのひとみさん(高3)もこの共演がとても印象深かったようで、「弦楽伴奏で歌えて、とても迫力があるし、ワクワクして楽しかった!」と感想を寄せてくれました。

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アンコールでも存分に楽しませてくれた子どもコーラス。ロイド・ウェバー作曲の「ピエ・イエズ」ではひとみさん、さとみさん(高1)が美しいソロを歌い上げ、ロッシーニ作曲の「2匹の猫のゆかいな歌」ではえいごさん(小3)、ひなさん(小3)が可愛らしい2匹の猫になりきって会場を沸かせました。


小学生の二人は、今回が初めての音楽祭。えいごさんに今日の感想を聞いてみると、「これからもっと練習して、自分の歌いたいように歌えるようになりたい!」と元気よく答えてくれました。

 

歌声はもちろん、朗読、踊り、ソロなど、音楽監督の古橋先生と12人の子どもたち、そしてサポートメンバーそれぞれが力を発揮して作り上げた魅力の詰まったステージとなりました。

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2日目:弦楽合奏ステージ、オーケストラステージ

2日目は、初回の音楽祭から賛助出演を続けてくださる相馬合唱団エスポワールの男声メンバー16名による「群青」(小田美樹作曲・福島県南相馬市立小高中学校平成24年度卒業生 作詞)のオープニング演奏でスタートしました。

続く子どもオーケストラの弦楽合奏、ホルスト作曲の「セントポール組曲」は、中村第一小学校器楽部有志も加わった50名で演奏。指揮は、この舞台のために半年以上指揮の練習を続けて来たバイオリンメンバーのほくとさん(中3)が務め、子どもたちは楽章ごとに異なる楽曲の雰囲気を掴み、深く豊かな音色で表現しました。

ほくとさんに終演後話を聞くと、「苦手だった、最後のリズムの指揮が本番で上手く行って良かった。指揮を続けて、木許先生みたいにみんなに信頼される指揮者になりたいです。」と力を出し切った様子でした。

その木許先生に指揮をバトンタッチして挑んだ「トリプティーク」は、芥川也寸志作曲の難曲。この曲のみ立奏にすることで大迫力の演奏が実現し、始まった瞬間から聴衆を圧倒するサウンドで、音楽が一気に会場を駆け抜けた印象でした。

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オーケストラステージ1曲目は、「創立10周年コンサートに相応しい、何か新しく、記念に残るようなステージを」という思いから実現した、世界的バイオリニスト久保陽子先生をお迎えしてのメンデルスゾーン作曲「バイオリン協奏曲 ホ短調 作品64」。初めての協奏曲の挑戦となりましたが、子どもたちは持ち前の集中力を発揮し、久保先生の圧巻のソロに見事に応える演奏を聴かせてくれました。更に久保先生はアンコールとしてパガニーニの「24のカプリース」を演奏してくださり、再びの超絶技巧に会場中が釘付けとなりました。
初めてのオーケストラに臨んだホルンのさとみさん(高1)に感想を聞きました。「とっても緊張したけど、一生思い出に残る演奏になった。一番難しかったのは2楽章で、久保先生がおっしゃった『生きる歓び』をどうやって楽器で表そうかと、とても苦労しました。」

次のロジャーズ作曲「管弦楽のためのサウンド・オブ・ミュージックセレクション」は、弦楽器・管楽器教室に通う全てのメンバーが、初めて全員で同じオーケストラ曲を演奏した、子どもオーケストラにとって記念すべき1曲となりました。弦楽器教室が始まり9年、吹奏楽音楽監督の岡崎先生を中心に管楽器教室が始まり5年目で、活動当初からの目標を達成しました。

最終曲は「すべての山に登れ」。度重なる天災やコロナを経験した相馬という町を重ねて「それでもすべての困難に立ち向かっていこう」というメッセージを込め、ステージ全員の想いが一つの音楽になったことが感じられるラストとなりました。

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アンコールには、弦楽器を初めて間もない10人の子どもたち、そして再び子どもコーラス・エスポワールのメンバーも加わり、3年ぶりにオーケストラ&コーラスバージョンの「相馬盆唄」を演奏。客席からのお馴染みの手拍子と大拍手で、2日間の音楽祭は幕を閉じました。
 

今回オーケストラのプログラムを組むにあたり、音楽監督の木許先生は「挑戦」のテーマを掲げられました。子どもたちは団員指揮での演奏、初めての日本人作曲家の作品・協奏曲・管弦全メンバーでの演奏、そしてコロナ禍で中断したフルオーケストラとコーラスの共演などに挑み、本番ステージで大きく成長した姿を見せてくれました。

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【お越しくださったお客様の感想から】

「子どもたちの心の輝きを感じることのできる素晴らしい演奏でした。」

「子どもたちの一生懸命な姿に触れ、良い演奏を聞かせていただき、本当に感動しました。相馬は地震が続き、心が折れそうになっていましたが、またがんばろうと乗りこえる力が出ました。」

地域の皆さまに支えられて歩んだ10年。オーケストラやコーラスから巣立った子どもたちが、大学生となって今回のステージの裏方を支えてもくれました。地域に根差しながら、これからも子どもたちに寄り添い、活動を続けて参ります。

改めまして、会場にお越しくださった皆さま、ご支援、応援くださった皆さま、保護者の皆さま、ご指導くださった先生方、ありがとうございました。


主催:一般社団法人エル・システマジャパン

共催:相馬市、相馬市教育委員会

後援:福島民報社、福島民友新聞社、河北新報社、相馬商工会議所

協力:オアシス楽器店、文京楽器

 

※ステージ上ではソーシャルディスタンスを十分に取った上でマスクを外して演奏している場合があります。

※マスクを外している写真は、撮影にあたり一時的に外しています。

 

Photo FESJ/2022/Yasutaka Eida
 

​文 エル・システマジャパン 渡辺更・砂川巳奈歌・田添菜穂子

編集 田添菜穂子