今から遡ること4年前の2016年。
リオ・デ・ジャネイロ五輪の熱気に包まれたブラジルより一つの映画がやってきました。
その名も「ストリート・オーケストラ」。
スラム街に住む子どもや若者たちをメンバーに1996年に結成された、エリオポリス交響楽団というオーケストラが誕生する時の出来事を映画化したものです。
(映画「ストリート・オーケストラ」公式サイト https://gaga.ne.jp/street/)
この映画で描かれるのは、ブラジルが抱える暴力、麻薬、貧困などの問題と、
その劣悪な環境の中で育ち、夢を見ることさえ諦めている子どもたちが
音楽を通して自らの価値を見出していく姿です。
今回の世界子ども音楽祭で来日するのは、同様にブラジル国内の各地において、
貧困地域の社会的に脆弱な子どもたちや若者に音楽を教えている
「Ação Social pela Música do Brazil (Social Action for Music of Brazil, ASMB)」です。
リオ・デ・ジャネイロをはじめとした各都市で音楽を学べる12もの施設をもち、
さらに公的な幼稚園や学校とのパートナーシップのもと、
子どもたちを音楽を通じて社会に巻き込み、市民として育てていくために活動を行なってきました。
創設から約25年が経つ今では、4,000人近くの子どもたちに音楽を届けているほど、
ブラジルの社会にとって大切な役割を担っています。
ASMBは、エル・システマの創設者である故アントニオ・アブレウ博士からの希望を受け、
彼の友人であり、南米でも著名な指揮者であったデイヴィド・マチャド氏が創設しました。
しかし、彼の突然の逝去を受けて、その遺志を引き継いだフィオレラ・ソラレス夫人が
ここまで大きな組織に育ててきました。
その功績を称えられ、ソラレス夫人は2014年にリオ・デ・ジャネイロの名誉市民の称号を贈呈されたほどです。
日本とも縁が生まれ、秋篠宮皇嗣同妃両殿下が2015年にブラジルご訪問の折に演奏を披露したり、バイオリニストの五嶋龍氏との交流の機会もありました。
このASMBが輩出し、また今回来日するのが「Camera Jovem (Camera Youth)」。
14歳から20歳までの若い音楽家たちは、みなリオ・デ・ジャネイロの貧しいコミュニティ(ファベーラ)の出身です。
音楽と出会いその魅力に目覚め、めきめきと上達した彼らは、
今や世界各地の音楽祭に出演したり、ヨーロッパツアーを行うなど、
目覚ましい活躍を見せています。
上述の映画「ストリート・オーケストラ」の中で、ひとりの少女が叫ぶ場面があります。「ずっとつらかった。母さんは自分の子どもの数も忘れてる。私なんか無視。でもここに来ると思えるんだ。『自分にも価値があるって』」。
音楽そのものや、音楽を通じた仲間が与えてくれるものは、
数え切れないほどたくさんの側面があります。
しかし、最も重要なのは、「あなたには価値がある」。
そのシンプルだけれども最も力強いメッセージであるということを改めて思い出させてくれます。
Evangelistic ministry inspiring hearts, changing lives, and proclaiming the Word of God. Partner with an evangelistic ministry committed to global discipleship and evangelism.