子どもたちを支えるアーティストー⑤クリスティアン・バスケスさん

本日ご紹介したいのは、指揮者のクリスティアン・バスケス氏。4月4日のステージで、総勢320名余りのオーケストラとコーラスによる第9をつくり上げる大変重要な要となる存在です。

©Wolf Marloh

エル・システマが生んだ指揮者であるバスケスさんは、8歳でバイオリンに出会ったのち、2006年からはエル・システマの創設者のホセ・アントニオ・アブレウ博士に直々に指導を受けて本格的に指揮を学ぶことを志し、博士から様々なことを学びました。


2008年に指揮者としてデビューして以降、ベネズエラのユースオーケストラをはじめ様々なオーケストラで客演指揮者や音楽監督を務めてこられました。

エル・システマの若手音楽家によるオーケストラ、テレサ・カレーニョ・ユース・オーケストラ・オブ・ベネズエラ(TYOC)の音楽監督に就任してからは、2013年に同オーケストラを率いて、ザルツブルグ音楽祭にも出演しました。

その後もウィーン放送響、ベルリン・フィルをはじめ各地の客演指揮者を務め、現在ではベルリンを拠点としながら、オランダのアーネム・フィルハーモニー管弦楽団の首席客演指揮者を務めるなど、グスターボ・ドゥダメルに続く次世代の指揮者として国際的にも幅広く活躍されています。


日本での活躍としては、2013年には東京フィルハーモニーさんに招かれて日本デビューを果たし、好演を博しました。

2015年にはTYOCとともに再来日。東京での公演だけでなく、奏者・関係者を含めて180人もの方々を連れて相馬公演も開催いただきました。

アンコールを含めて夜10時過ぎまで続いたコンサートでの熱狂は、鑑賞していた相馬・大槌子どもオーケストラの子どもたちはもちろん、ご来場いただいた相馬市民の皆様の心に今も残っていると確信しています。


2013年の来日時に開催された記者会見では、エル・システマの理念は「平和のためのコンサート」であり、「楽器を持って団結し、よりよい世界を目指す」ことだと、バスケスさんは確信を持って語っておられます。 2015年の相馬公演で来相された際は、特別に相馬子どもオーケストラとの交流と指導の時間を設けてくださりました。

大槌の子どもたちも相馬に駆けつけ、ベネズエラの160人の若者と音楽を通して心を通わせあったことは、相馬や大槌の子どもたちにとっても初めてに近い「世界」との出会いであり、同じエル・システマの理念の元で学び素晴らしい音楽を奏でる先輩のお兄さん・お姉さんとして、子どもたちの心にも鮮やかな記憶として残っています。日本とベネズエラという遠く離れた国々でも音楽を通して心を交わすことができたという体験は、バスケスさんがおっしゃる「平和のためのコンサート」を実現するための一歩に他なりません。


今回は、2015年当時にコントラバス奏者として来相されていた、現在の奥様のアンドレイナさん、さらに生まれて1年に満たないお嬢さんと3人での来日。奥様とは舞台の上で共演されます。


2018年末にも来日し、東京フィルハーモニーとともに第9を披露されたバスケス氏ですが、その演奏を聴いた方からは「世界音楽としてのベートーヴェン」「これまで聴いたことがないような第9だった」という声も聞こえてきます。


ドイツやオーストリアから生まれたクラシック音楽やベートーヴェンの音楽は、今やヨーロッパのみならず、遠く離れたベネズエラや日本、そして世界中で愛されています。


ベートーヴェンが第9にこめた「全ての人はみな兄弟である」というメッセージを体現するような、日本や世界の子どもたち、そしてそれを支えるアーティストたちとともに彼がつくりあげる第9が、どのようなものになるのか楽しみでなりません。

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