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第10回エル・システマ子ども音楽祭 in 相馬

2025年3月22日

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第10回エル・システマ子ども音楽祭 in 相馬 イベントレポート

去る2025年3月22日(土)に、相馬子どもオーケストラ&コーラスは「第10回エル・システマ子ども音楽祭 in 相馬」を開催いたしました。

相馬で2015年から続けてきた子ども音楽祭も10回目。今年はこれまで2日間にわたって開催していたコンサートを1日でお楽しみいただく特別なプログラムを準備しました。相馬市で音楽に親しむ子どもたち150人が集まり、これまでで最多となる600人を超えるお客様を前に、吹奏楽、コーラス、オーケストラ、そしてオーケストラ&コーラスと多彩な演奏をお届けしました。
写真とともに、音楽祭のステージを振り返ります。

献奏

記念すべき第10回目の音楽祭は、オーケストラ&コーラスによる献奏で幕を開けました。オーケストラ&コーラスの結成当初から10年に渡り大切に演奏してきたモーツァルトの「アヴェ・ヴェルム・コルプス」、そしてこの日のために特別に弦楽合奏版に編曲されたクレンゲル作曲の「12本のチェロのための讃歌」を、編曲いただいた金森詩乃さんに見守られながら、弦楽器全員で祈りを込めて世界初演として披露しました。                                

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第1部:合唱 


コーラスステージは、今回の音楽祭で卒業するあやさんの、相馬子どもコーラスでの日々を振り返るナレーションから幕を開けました。東日本大震災やコロナ禍など、困難に直面したとき、いつも歌がそばにあったことを思い返しながら、<震災、そして今>のテーマで「ほらね、」(作詞:伊東恵司、作曲:松下耕)と「わたしたちは 花となり」(作詞:峯陽、作曲:松下耕)を歌い上げました。

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次の<唱歌の四季>(編曲:三善晃)では、春は「朧月夜」、夏は「茶摘」、秋は「紅葉」、冬は「雪」と、日本の四季を色鮮やかに描き出しました。今や音楽の教科書からも消えつつある唱歌ですが、情景が目の前に広がるような詩と馴染み深い旋律に、ラッキィ池田先生・彩木エリ先生のダイナミックかつかわいらしい振付がついて、日本の唱歌の美しさをしみじみと感じさせる舞台となりました。 

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後半は、オーケストラ&コーラスによる「児童合唱と管弦楽のための組曲『えんそく』」(作詞:阪田寛夫)の合同演奏です。以前から歌い継いできた「えんそく」ですが、今回第10回の記念として、ついにオーケストラとの合同演奏が実現しました。作曲者の山本直純さんのご子息で、楽譜校訂をされた山本純ノ介さんにもお越しいただき、指揮の古橋先生とのトークもお楽しみいただきました。 

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出発時のワクワク感から、自然いっぱいの道を進み、お弁当の後は城跡でお昼寝。山の頂上で日本列島や地球全体に思いを馳せ、日暮れには家族の待つ家へと帰っていく…まるで来場者全員で遠足に行ったような、満足感のある締めくくりになりました。往年の管弦楽らしい華やかな伴奏を、オーケストラがもう一方の主役として好演。賛助出演のレガーロ東京の皆様の歌声にも支えられ、子どもたちの魅力が存分に引き出された合唱ステージとなりました。 

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コーラスで参加した、ひろみさん(小6)の感想


「今日は気持ちよかったです。先輩が支えてくれたから、歌うのが楽しいと思えました。先輩が抜けるのはさみしいけど、これからも楽しく歌いたいです。」

第2部:吹奏楽とオーケストラ 


第2部は、相馬市立中村第一中学校、中村第二中学校、向陽中学校の市内3つの中学校の吹奏楽部員計70名による「前前前世」などの合同演奏で迫力たっぷりにスタートしました。「ヤングマン」ではお馴染みのYMCAの振付も披露してくれ、会場を楽しませてくれました。また演奏後には、各吹奏楽部の部長がこれまでの練習の様子や来年度の抱負を語ってくれました。

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後半には、オーケストラ指揮の木許先生による<海のイメージに基づくセレクション>として、武満徹作品の中から「海」につながる珠玉の4曲を演奏しました。『他人の顔』の美しいワルツに始まり、「太平洋ひとりぼっち」「波の盆」と1曲ごとに武満の深淵な世界に入り込んでいく中、観客は、気付くと終曲の「系図」より<6. とおく>へと誘われて行きます。

 
この曲には、2024年に亡くなられた詩人の谷川俊太郎による同名の詩の朗読が付けられており、ナレーションはメンバーのひなのさん(高1)が担当しました。スティールパンやハープなどの特殊楽器、そしてアコーディオンには佐藤芳明さんをお迎えし、複雑でいて心地よい波のような音楽と「でもわたしはきっと / うみよりももっととおくへいける」と結ばれる詩に乗せ、オーケストラとナレーションが一体となって少女の成長を表現しました。 

大役を終えたひなのさんに終演後、感想を聞きました。

 

「原稿を最初に読んでみたときは、セリフが長いし、感情の起伏も表すところがあるし、大丈夫かな?と思ったけれど、いろんな人にアドバイスをもらって、自信をもって舞台に上がることができました。本番が一番うまくできました!たくさんの拍手をもらって、終わったときは「楽しかった」と心から思えました。」

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第3部:オーケストラ 


最後に、ベートーヴェンの交響曲第7番をオーケストラが披露。音楽祭での7年ぶりの再演となり、これまでの卒業生にも多く出演してもらったことに加え、今回は子どもオーケストラとして初めて、交響曲の第4楽章を小学3年生以上の弦・管メンバー全員で演奏することにチャレンジしました。通常の譜面の演奏に挑戦したり、特別に準備された簡単譜面を使ったりと、それぞれが自分の出来る限界に挑みながら、繰り返すリズムで駆け抜けるような音楽に食らいついていきました。終盤に向かうにつれステージが熱気に包まれ、誰もが夢中で音楽に没頭している姿は、まさに子どもたちの「生きる力」がほとばしる瞬間だったのではないでしょうか。 
 
アンコールには、弦楽器初心者メンバーや和太鼓、再びコーラスのメンバーも交えて120人の「相馬盆唄」をお届けし、会場のお客様の手拍子も加わって最高潮の盛り上がりとなり、3時間に渡る音楽祭が幕を閉じました。 
 

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ホルンを始めて10か月で「相馬盆唄」を演奏したみなとさん(小4・ホルン)が、初めての音楽祭の感想を次のように話してくれました。
「初めてのオーケストラでのステージでした。いい感じに吹けたので良かったです。めっちゃ楽しかったです。特に力いっぱい吹くところとかが良かったです。もっとふける曲が多くなったらいいなと思います。」

この音楽祭を最後に、オーケストラから6人、コーラスから3人が卒団を迎えました。それぞれ、立ち上げ当初から10年以上に渡り活躍してきたメンバーばかりです。本番の終了後にはそれぞれ挨拶をしてもらう卒業セレモニーを行いましたが、コーラスではみんなで涙ながらに肩を組んでもう一度合唱をするなど、さみしくもあたたかいお別れの会となったようです。 

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第1回の音楽祭からステージに立ち続け、今回卒業を迎えたコーラスの大学4年生2人が感想を寄せてくれました。

 

あやさん(大4)
「最後のステージでした。相馬音楽祭の一回目から出演していたので、感慨深いです。「えんそく」を含め、やったことのある曲がほとんどで、これまでの活動を振り返りながら歌えてよかったです。後輩の皆さんには、たくさん仲間を増やしてうたうのをやめないでください、と伝えたいです。」

さえさん(大4)
「記念の第10回で卒業することができて、うれしいです。メンバーも変わってダンスもそろえるのが大変でしたが、去年、一昨年、ミュージカルだったので、みんな振り付け覚えが早くてよかったです。自分も先輩が抜けると大変だったのを思い出しますが、舞台の楽しさを忘れず、続けてほしいです。合唱をやってきてよかったです。4月からは教員として、子どもたちを支えたいと思います。」
 

ご来場くださったお客様から、アンケートにて、あたたかいお言葉をいただきました。

・毎回楽しみにしています。年々上達しているように思います。音楽はいいですね。心が豊かになります。

・毎年とても楽しみにしています。これまで2日間だったのでコーラスか、オーケストラどちらかしか聞けませんでしたが、今回は、一日を通してどちらも聞くことができてうれしく思います。これからも応援しています。がんばってください。

・地元の子どもたちの「コーラスが好き、音楽が好き」という気持ちが伝わってくるようで、とてもうれしく思った。
 

​10回目の記念となる音楽祭という場で、子どもたちは仲間と奏でる音楽の楽しさを会場いっぱいに表現し、いつもあたたかく見守ってくださる地域の皆様に10年間の成長の軌跡をお見せすることができました。今後とも、相馬での子どもたちの活動を応援いただければ幸いです。

改めまして、会場にお越しくださった皆様、ご支援、応援くださった皆様、保護者の皆様、ご指導くださった先生方、ありがとうございました。


主催:一般社団法人エル・システマジャパン

共催:相馬市、相馬市教育委員会

後援:福島民報社、福島民友新聞社、河北新報社、福島テレビ、テレビユー福島、福島中央テレビ、福島放送、株式会社ラジオ福島、相相馬商工会議所 

協力:オアシス楽器店

 

Photo FESJ/2025/Yasutaka Eida

※文中の学年は全て当時のものです。

​文 エル・システマジャパン 渡辺更・室清美・田添菜穂子

編集 田添菜穂子 稲寄智秋

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