"エル・システマジャパン” オーケストラフェスティバル2017
終演後の集合写真 | 様々な立場、年齢の出演者たち |
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オケフェスの様子 | 演奏風景1 |
演奏風景2 | 演奏風景3 |
演奏風景4 | 演奏風景5 |
楽譜の確認をするフェローオケと相馬子どもオケのチェリスト | 演奏風景6 |
曲間に行われた団体の紹介 | 出番を待つコンサートミストレスと見守るフェロー |
楽屋で出番を待つ子どもオーケストラ |
〜音楽を共に奏でる喜びを分かちあおう〜
(1~2:FESJ/2017/Takaaki Dai, 3~9: Mariko Tagashira, 10~12: Naoki Nakada, 13:Mihoko Nakagawa)
『“エル・システマジャパン”オーケストラフェスティバル』が4月29日、渋谷区文化総合センター大和田さくらホールにて開催され、エル・システマの理念に共鳴する4つのオーケストラが共演。音楽を共に奏でる素晴らしさをバックグラウンドの異なる共演者同士、そして会場にいらしたお客さまとも分かちあう画期的な集いとなりました。
4つのオーケストラが一堂に
4つの団体による共演(FESJ/2017/Mariko Tagashira)
「大槌子どもオーケストラ」の子どもたちは昨年からパブリックな場所で演奏をスタートしたばかりで、今回の『オーケストラフェスティバル』は、文字通りの「はじめて尽くし」。はじめての東京、はじめての大ホール、はじめての大人数での演奏…といった具合です。「フェローオーケストラ」は、エル・システマジャパンの活動を“弦楽器指導ボランティア”として支えてきたアマチュア音楽家を中心とするグループ。子どもたちにとっては、大きなお兄さんやお姉さんのような存在です。そして、「HandsOnオーケストラ」は、弦楽器を学びはじめてから全員が1年未満であるものの、人生経験なら豊富という大人たちで構成されています。このように、異なる個性を放つオーケストラによる共演がどのような化学反応を起こすか、さらに、お客さまともいかにして音楽を共に奏でる喜びを共有できるかという点を大切にしながら、『オーケストラフェスティバル』は企画されました。
今回のステージで演奏したのは、小学校1年生から60代の大人までの総勢130名あまり。普段は、「相馬子どもオーケストラ」、「大槌子どもオーケストラ」、「フェローオーケストラ」、「HandsOnオーケストラ」と、それぞれ異なる環境で練習していますが、オーケストラという集団のなかで仲間と一緒に音楽を作りあげていくというマインドは共通しています。しかし4つのオーケストラ自体は、平均年齢や活動拠点、演奏技術などは、ばらばら。「相馬子どもオーケストラ」には、昨年3月にドイツでベルリン・フィルと共演した子どももいれば、その時期にはじめて弦楽器に触れた子どももいます。
新鮮なハーモニーで発見
『オーケストラフェスティバル』では、もちろん全員が全曲を弾いたわけではありません。たとえば、モーツァルトのディヴェルティメント ニ長調K.136(125a)とパッヘルベルのカノン ニ長調には、初心者も含めた4つのオーケスラが参加。一方、難度が高いベートヴェンの交響曲第5番 ハ短調 Op.67は、「相馬子どもオーケストラ」と「フェローオーケストラ」のみが演奏しました。しかしながら、いつもと違うメンバーとのあいだに生まれるハーモニーには、新鮮な発見があったようです。優里佳さん(大槌・小1・バイオリン)は、「(大人数の演奏で)最初は緊張したけれど、最後は上手にできてよかった」と、少しはにかみながら答えてくれました。舞姫さん(相馬・小6・バイオリン)は、「今日は、フェローがたくさんいて楽しかった」との感想。昨年ベルリンで演奏し、今回の『オーケストラフェスティバル』ではコンサートマスターも務めた隆行くん(相馬・中3・バイオリン)は、「一緒に演奏していて、フェローと一体感が得られた。隣のフェローは自分とはまったく違うフィンガリングをしていて、曲に感情がこめられていた」と刺激になった様子。また、「HandsOnオーケストラ」の杉原さんと太田さん(共にバイオリン)は、「このイベントがあったから、大変な練習もがんばれました。本当にいい経験をさせてもらいました」と、実にうれしそうでした。
誰でも参加できるオーケストラ
「音楽を聴くことと、実際に演奏することは違う。自分で音楽を奏でる素晴らしさを知ってほしい」と予てから提唱してきた、エル・システマジャパン音楽監督の浅岡洋平先生。今回の『オーケストラフェスティバル』では総監督として企画をリードし、当日は指揮者として4つのオーケストラをまとめあげました。「オーケストラは経験者でないと参加できないと一般的に思われているけれど、決してそうではない。初心者ほど、伸びしろがある。このイベントを通じて、オーケストラはすべてのひとに門戸が開かれていると伝えたかった」とおっしゃいます。誰もが参加できるオーケストラ。そして、参加してこそ得られるものが、きっと、ひとそれぞれあるはず。浅岡先生は舞台袖に消える最後の最後まで、ステージを指差しながら「ここへ来て、一緒に演奏しましょう!」というジェスチャーを客席へ向かってくり返しました。ロビーの一角に設けた「弦楽器体験コーナー」には、子どもから大人までたくさんの方々が集まり、音楽を共に奏でるための第一歩を踏みだしたようです。
次のステージへ向けて
指揮者でオケフェス総監督の浅岡先生(Naoki Nakada)
楽器体験コーナーにてフェローとヴァイオリンを体験中のご来場者
(FESJ/2017/Mihoko Nakagawa)
『“エル・システマジャパン”オーケストラフェスティバル』では、バッハのブランデンブルグ協奏曲第3番 ト長調 BWV10481、エール管弦楽組曲第3番 ニ長調 BWV1068、モーツァルトのディヴェルティメント ニ長調K.136(125a)、パッヘルベルのカノン ニ長調、バーンスタインのシンフォニック・ダンス「ウエスト・サイド・ストーリー」より、ベートヴェンの交響曲第5番 ハ短調 Op.67が演奏されました。さらにアンコールでは、シンフォニック・ダンスより「マンボ」、エルガーのエニグマ変奏曲より「ニムロッド」が披露され、『オーケストラフェスティバル』は盛大な拍手とブラボーの声が響くなか、幕を閉じました。
エル・システマジャパン代表理事の菊川穰は、「音楽の力でいろいろな垣根を越え実現できるものがあることを、今日この場にいらした方たちは共感してくださったのではないでしょうか」とコメント。長野県駒ヶ根市でスタートしたばかりのプロジェクトをはじめ、今年も多彩な活動が目白押しですが、ひとつひとつ活動を丁寧に積みあげていく大切さを実感しました。
今回も、写真撮影、動画撮影、受付、広報PR、デザインなど多方面に渡り、大勢の方々にプロボノでご協力いただきました。735席の会場はほぼ満席で、当日は74,420円の募金をいただいたほか、エル・システマジャパンの関係書籍やイベントの記念タオルもお求めいただきました。ご来場くださったお客さまと運営をサポートしてくださったみなさまに、エル・システマジャパン スタッフ一同、心より厚く御礼申しあげます。
(文:仲川美穂子 エル・システマジャパン広報官)