ホワイトハンドコーラスドキュメンタリー上映会

~共生社会をめざす芸術活動とは~

   (©️FESJ/2017/Hiromi Koyama)

エル・システマジャパンが新たに立ちあげた「東京ホワイトハンドコーラス」の活動をより多くの方々に知っていただくため、「ホワイトハンドコーラスドキュメンタリー上映会 ~共生社会をめざす芸術活動とは~(特別協力:株式会社Speee)」を8月24日に開催いたしました。

このイベントには54名の方がご参加くださり、上映に続くフリートークセッションでは、ホワイドハンドコーラスへの関心の高さがうかがえるような質問をたくさんいただきました。

ベネズエラのホワイトハンドコーラス

今回のイベントで上映したのは、2013年のザルツブルグ音楽祭にベネズエラから参加したホワイトハンドコーラスの子どもたちを記録したドキュメンタリー。ザルツブルグ音楽祭といえば、世界中から一流のオーケストラ、歌劇団、指揮者、演奏家などが集まる世界最高峰の音楽と演劇の祭典です。そこへ招聘されたベネズエラの子どもたちのリハーサルや本番に臨むときの真剣な表情、舞台裏での茶目っ気たっぷりな素顔、本番を終えて興奮と感動でいっぱいの様子が、子どもたちと指導者へのインタビューを交えた映像で紹介されました。

ベネズエラのララ州で1995年に産声をあげたホワイトハンドコーラスは、白い手袋をはめた手と体の動きで歌の世界を表現するろうの子どもたちと、声を出して歌う視覚や身体、発達などに障害のある子どもたちで構成されています。子どもたちの共通語は手話で、視覚に障害のある子どもも手話を学び、ほかの子どもとは触れあってコミュニケーションをとります。ダウン症の子どもが盲ろうの子どもに触れて歌の合図を出すこともあります。さまざまな背景を持った子どもたちが異なる表現方法で一緒に歌うホワイトハンドコーラスは、いわば学びあいや助けあいが凝縮された「共生のコミュニティ」なのです。その一員であるミラグロさんは、「(ホワイトハンドコーラスの活動を通して)すばらしいひとたちに出会い、多くのことを学びました。私は内気でしたが、みんなが私の殻を破ってくれました」と上記のドキュメンタリーで語っています。ベネズエラではホワイトハンドコーラスは国家特別支援プログラムとして実施され、これまでに2,000人以上の子どもが仲間と一緒に歌の世界をつくりあげてきた実績があるそうです。

ベネズエラのホワイトハンドコーラス(©️FMSB)

「東京ホワイトハンドコーラス」の活動

まだ生まれたての「東京ホワイトハンドコーラス」は、耳がまったく聞こえない、もしくは部分的にしか聞こえない子どもたちを対象にしています。その活動について、パネルトークではエル・システマジャパン代表理事の菊川穣と「東京ホワイトハンドコーラス」の指導にあたっているコロンえりか氏から紹介がありました。菊川は、ホワイトハンドコーラスは手話コーラスとは異なり、独自の芸術活動であるという点を強調。その根底には、耳が聞こえないひとには「ろう文化」があり、それ自体がとても豊かであるという認識があります。コロン氏は学生時代にボランティアでろう学校に行ったとき、耳が聞こえない子どもたちに「歌って」とせがまれ、歌を歌ったというエピソードを披露。「聴覚障害のある子どもにも音楽が存在する。音楽は振動以上のものがある。まずはそれを信じられるかどうかです」と訴えました。実際、「東京ホワイトハンドコーラス」の子どもたちは、指導者のサポートで歌詞を咀嚼し、曲の雰囲気に合わせて自分たちでマイム(手や体や表情を使った表現)を考えています。コロン氏は、「練習に参加している子どもたちは、とても表現が豊か」とコメントしました。

コロンえりか氏と菊川によるトーク

(©️FESJ/2017/Naoko Wakabayashi)

フリートークセッションでは、「ホワイトハンドコーラスは楽譜を使うのか?」、「耳の聞こえない子どもたちはリズムや音程を感じているのか?」、「どうやって音楽を体得するのか?」、「子どもたちはどう変化しているか?」など、「具体的な練習法や子どもたちの様子について質問が集中しました。「東京ホワイトハンドコーラス」の子どもたちは、楽譜の代わりに教室の時間外では歌詞とマイムを収録したビデオで歌を覚えていること、リズムに合わせてマイムができるようになってきたこと、子ども同士で表現を発表しあうことで歌の世界がより豊かになること、また、聴覚障害にも先天的、後天的、難聴、特定の音域のみ聞こえないなど、いろいろな状況があることを菊川とコロン氏は説明しました。そのうえで、子どもたちがそれぞれ持っている能力をいかに引きだしてあげられるかが重要だと語りました。

「東京ホワイトハンドコーラス」の今後の展望について、菊川は「障害児に限らず、子どものニーズは多様なのでチャレンジではあるけれど、なるべくインクルーシブな環境を整えていきたい。ろうの子どもたちが普段の生活では交流の機会がない子どもたちに出会い、一緒に活動できる場をつくっていきたい」と話しました。

​ホワイトハンドコーラス初来日&エル・システマジャパンとの共演はこの秋

 10月22日に開催予定の「エル・システマフェスティバル2017 / エル・システマガラコンサート」では、「東京ホワイトハンドコーラス」、「相馬子どもコーラス」、そして、ベネズエラから来日するホワイトハンドコーラス、「ララ・ソモス」が池袋の東京芸術劇場にて共演予定です(ガラコンサート詳細はこちら/チケットはこちら)。これまで練習を重ねてきた「東京ホワイトハンドコーラス」のなかには、「私たちの歌を発表したい!」とこの日を心待ちにしている子どもたちもたくさんいます。皆さまのご来場をお待ちしております。

(文:仲川美穂子 エル・システマジャパン広報官)

このイベント開催に向けて、現在クラウドファンディングを実施していますので、皆さま、どうぞ応援をよろしくお願いいたします。

!2017年9月8日(金)午後11時まで!