第6回エル・システマ子ども音楽祭 in 相馬

想像ができなかったことがたくさん起こった2020年。

「第6回エル・システマ子ども音楽祭 in 相馬」も本来であれば2020年3月に開催される予定でした。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期となり、年の瀬の12月27日(日)に当初とは内容を変更する形で、無事相馬市民会館で開催されました。

練習が中断し、いつから再開できるのだろうかと思う日々の中で努力を重ねてきた子どもたちの1年の集大成となる演奏に、会場からは大きな拍手が起こり、温かい時間に包まれた冬のひと時でした。

※写真は12月20日の非公開発表会にて撮影しました。

音楽祭は、相馬子どもコーラスによる録音演奏披露で幕を開けました。

曲は、昨年朝のNHK連続テレビ小説『エール』で話題になった古関裕而氏が作曲した「相馬市民の歌」。

今回のコンサートに相馬子どもコーラスは参加できませんでしたが、12月20日(日)に保護者限定の非公開発表会を開催し、その様子を録音しました。

音楽監督(吹奏楽)の岡崎先生が、1973年の相馬市役所の火災で焼失したとみられていた原譜を探し、福島市の古関裕而記念館に残っていた原譜のコピーを入手。今回の録音に至るまで様々に苦労があったと、岡崎先生と、コーラスの音楽監督で今回、合唱版の編曲もして下さった古橋先生が披露前にお話しくださいました。

会場では口ずさんでいらっしゃる方もいらっしゃり、終演後のアンケートでも「私が小・中学校の時には、学校でよく歌っていたので、聞いた時に心の中ですぐに歌えました」「今後何かの折に市民が歌う機会があるといいですね」との感想も。

続いては相馬子どもオーケストラ管楽器教室のメンバーによる演奏。管楽器教室は2017年夏にスタートし、これまでは小規模な発表会を行ってきましたが、3年半を経てようやく音楽祭デビューが実現。現在小学生から高校生まで20名のメンバーがいますが、開始当初初心者で始めたメンバーも出演しました。

9名のフルートアンサンブルによるL.アンダーソンの「ブルー・タンゴ」は、飛び跳ねるように楽しくさわやかな音色で、一足先に春が来たような気分に包まれました。

演奏に使用したアルトフルート、バスフルートは低音を担当する特殊楽器で、子どもたちが演奏するのはもちろんこれが初めて。珍しい楽器のため、実際の楽器で練習が開始できたのは12月になってからだったと、指揮の岡崎先生からお話が。初めての楽器にも果敢に挑戦した子どもたちに客席からは拍手が響きました。

木管楽器の音が混ざりあいハーモニーを奏でたR.シュトラウスの「13管楽器のためのセレナーデ」は、美しくも難易度の高い曲。各パートに講師の先生方も入り、普段は中学校・高校の吹奏楽部で活躍するメンバーを中心に演奏を披露しました。昨年から楽器を始めたメンバーもいる中、心地よく美しいハーモニーを響かせました。

弦楽合奏は、客演指揮者(当時・現音楽監督)の木許先生の指揮で、W.A.モーツァルトの「ディヴェルティメント K.136 」からスタート。初心者用譜面(通称B(=ビギナー)譜)を使って、昨年楽器を始めたばかりの子どもたちも演奏の一翼を担いステージに立ちました。小学2年生から高校3年生までの子どもたち、普段レッスンをして下さっている先生方やボランティアの皆さんまで、子どもも大人も一緒にリズムを楽しみ、モーツァルトらしい音楽の強弱をドラマチックに表現。弾き終えた時に舞台にいる全員が浮かべていた、さわやかな笑顔が印象に残りました。

休憩を挟み、J.S.バッハの「ブランデンブルク協奏曲第3番」、P.ウォーロックの「カプリオール組曲」を演奏。時代も趣向も全く異なる2曲に、会場のお客様もみな真剣に聴き入っていました。

最後はこの1年の集大成となる、現在も活躍するイギリス人作曲家J.ラターの「弦楽のための組曲」。イギリス民謡から各楽章のメロディが取られ、ストーリーを感じさせる副題も付けられています。第3楽章『O Waly Waly (ああ、悲しきかな)』ではコンサートミストレスのももかさん、ビオラトップのななみさんの美しいソロの掛け合いが観客を魅了。愛の儚さを歌うこの曲を情緒豊かに表現しました。

 

アンコールに弦楽器全員で演奏したR.ヴォーン=ウィリアムズの「ロージーメードル」は、家族の愛への感謝と平和への願いが込められた、まさに2020年の締めくくりに相応しい一曲。大変だった2020年を優しく癒してくれるような音色がホールに響き渡りました。全ての演奏を終え誇らしげな子どもたちに、客席からは大きな拍手が湧きあがりました。

終演後に木許先生と満面の笑みで写真に収まる、コンサートミストレスを務めたももかさん(写真右)と、今年度子どもオーケストラ卒業を迎えるビオラトップのななみさん(写真左)。子どもオーケストラを引っ張って来た二人から、音楽祭の感想を寄せてもらいました。

ももかさん

「コンサート当日は、こんな状況にも関わらず多くのお客さんが来てくれて、今から私たちの演奏を届けられるんだ、と思うとそれだけで嬉しかったです。演奏直前にスタンバイした時には、不安から来るものではなく、楽しみでしょうがない時に莫大な期待から来る緊張が押し寄せてきて、1 年ぶりのその感覚に涙が出そうになりました。本番の楽しさは言葉にできないほどで、何から何まであっという間、これほどまでに終わってほしくないと思ったのは初めてでした。終わった直後に色々な先生方によかったよ、という言葉をもらった時には、涙が止まらなくて喋れなくなってしまいました。」

ななみさん

「今回の音楽祭は、また一段と特別なものになりました。音楽祭とそれまでの練習は相馬子どもオーケストラにとって大きな成長になったと思います。誰かが誰かのために努力し、助け合い、笑い合い、いい合奏が、いい音楽ができるように努力したその時間や思い出は何ものにも代えがたく、いつまで経っても色あせない貴重な経験です。私たちはプロじゃないけれど、他のどんなきれいで上手な演奏よりも、私は皆と演奏したあの光景が時間が好きで、何年後になってもあの時の音楽を聴きたいと思うでしょう。そんな思い出の詰まった、私たちにしかできない素敵な演奏ができたと思います。」

前週に行われた子どもコーラスの録音から当日までご協力頂いた皆様、見守ってくださいました保護者の皆様、ご指導いただいた先生方、大変な状況でも立派にステージを作り上げた子どもたち。全ての皆様にお礼を申し上げます。

※ステージ上ではソーシャルディスタンスを十分に取った上でマスクを外して演奏している場合があります。

※マスクを外している写真は、撮影にあたり一時的に外しています。

 

主催:一般社団法人エル・システマジャパン

共催:相馬市、相馬市教育委員会

後援:福島民報社、福島民友新聞社、河北新報社、相馬商工会議所

協力:オアシス楽器店

Photo FESJ/2020/Yasutaka Eida