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カリフォルニアからやってきたサンタさん

12月の大槌町にやってきたサンタクロースのような、リチャード・エレジーノさん。緊張した表情でバイオリンやチェロを構える子どもたちに、「歌うように弾いてごらん。ここを世界中で、一番幸せな楽しい場所にしよう」と語りかけました。

リチャードさんはロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団で活躍して37年目を迎える、ベテランのビオラ奏者。軍人だったアメリカ人のお父様と洋裁店を営んでいた日本人のお母様のあいだに東京の蒲田で生まれ、16歳ではじめてアメリカの地を踏みました。その後、ルイ・キーヴマン氏に師事し、22歳から映画やテレビ番組でビオラ演奏の仕事を始めます(その作品のなかには、あの『大草原の小さな家』もあります!)。当初は順風満帆でしたが、シンセサイザーの台頭により、アコースティック楽器には次第に補佐的な役割しか求められなくなりました。ビオラの可能性をもっと追求したかったリチャードさんは悩みました。「楽器を使って、何を考えるのか。何を演奏するのか。何をしなければならないのか」そう悩んだ挙句、猛練習を積み、ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団のオーディションに見事合格。以来、オーケストラのビオラ奏者としての人生が36年過ぎました。

今年61歳になったリチャードさんがエル・システマに出会ったのは、5、6年前にベネズエラを訪れたときです。リハーサル室に入った途端、子どもたちが演奏しながら発するエネルギーに涙がこぼれたそうです。貧困という壁が大きく立ちはだかるベネズエラでは、エル・システマの活動に参加する子どもたちの多くにとって、演奏することが未来への希望なのです。「一生懸命がんばって、いつか、ドゥダメルのようになりたい」そんな将来へかける子どもたちの想いがひしひしと伝わってきたそうです。その後、リチャードさんはオーケストラのビオラ奏者としての仕事を続けるかたわら、ロサンゼルスで立ちあがったエル・システマ式のユースオーケストラ(YOLA:Youth Orchestra Los Angeles)の指導にたずさわり、そのご縁でエル・システマジャパンの活動拠点である相馬に4回、大槌に今回で3回も足を運んでくださいました。

毎年、この時期に大槌町の子どもたちに会いに来るリチャードさん。東日本大震災で親族が亡くなったり、仮設住宅での生活が続いていたりと大変な状況にあっても、笑顔でがんばっている子どもたちを見ると応援したくなるそうです。18日にエル・システマジャパンが主催したミニコンサートでは、ビオラ向けに編曲したバッハの「無伴奏チェロ組曲」をソロで聴かせてくださったほか、宮沢賢治が作詞作曲した「星めぐりの歌」から「ジングルベル」まで、最初から最後まで子どもたちに寄りそうように一緒に演奏してくださいました。

「この1年で、みんなとても上手になったね。昨年はひとりひとりの演奏だったけれど、今年はみんなで一緒に演奏できて、すばらしかった。毎日少しずつ努力するんだよ、1日1円ずつ貯金するようにね」そう語りかけるリチャードさんの言葉を、子どもたちは目をぱちくりさせながら聞いていましたが、毎年12月になるとやってくる日に焼けたサンタさんのメッセージをふとしたときに思い出すのでしょう。

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