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世界の子どもたち ー②フランス

2020年に開催される東京オリンピックまで、残すところ230日となりました。

さらに4年後、2024年のオリンピックは、フランスのパリで開かれます。

世界子ども音楽祭では、このフランスからも子どもたちを招きます。


エル・システマの理念を元にフランスで子どもたちへの活動を行っているのは、"TUTTI Passeur d'arts"。

音楽を通して社会教育を行うため、2013年に創設されました。

現在では、フランス国内の4つの拠点での教室に加えて、障害のある子どもたちも参加できる活動「CAP Pôle Handicap & Santé」を行っています。


実は、このTUTTI Passeur d'artsには前身となる活動がありました。

団体の創設者であるジャン・クロード・デカロン氏は、35年前に楽器店を創業。

音楽が子どもたちに与える力を信じていた彼は、事業を拡大するかたわら、経済的に恵まれない子どもたちへの訪問コンサートやミュージカルを開催してきました。


実はフランスでは、日本のように学校など公教育の中での音楽の授業はなく、音楽活動に参加できる子どもは1%以下とも言われます。

貧困や移民、学力低下などの社会問題を抱え、学業がうまくいかない子、読み書きができない子、非行に走ってしまう子などが無視できない数に増えてきています。


そのような状況に心を痛めていたデカロン氏が活動のヒントを得たのは、なんと日本への訪問がきっかけでした。

楽器工場の見学のための来日でしたが、日本で西洋音楽がなぜこのように発展しているのか疑問を持っていた彼は、学校の教育現場も訪問し、音楽の授業に衝撃を受けます。

子どもたちが音楽の時間になった途端に生き生きと歌ったり、楽器を取り出し準備をする様子を見て、学校教育の枠組みの中でたくさんの子どもたちが音楽を楽しんでいることに感銘を受けたのです。


そしてデカロン氏の活動は学校でのオーケストラによる教育活動に発展。

その後10年間にわたり活動を続け、フランス全国で350を超える学校のオーケストラを設立しました。

その功績を認められ、社会を変革する事業を生み出したとして、世界的な社会起業家の支援組織であるアショカ財団より2009年に「アショカ・フェロー」にも選出されています。


さらに、ベネズエラのエル・システマを元にしたプログラムを取り入れ、TUTTI Passeur d'artsを設立。 芸術の力をすべての基盤として、最も社会的に脆弱な層、最も貧しい層に対して、音楽教育を提供することをうたったTUTTIでは、障害や社会的排除、貧困に対する広範囲にわたる行動も団体のミッションの中に含まれています。

また、ベネズエラからの指導者としてイェフレン・カレーロ氏を迎え、さらに活動を深めています。

(左:ジャン・クロード・デカロン氏  右:イェフレン・カレーロ氏)


華やかな芸術の国というイメージがあるフランスですが、様々な社会問題を抱えているのはどこの国でも共通しています。

日本やベネズエラ、様々な国々での音楽によるアプローチがお互いに示唆を与えあっていることはとても興味深いものです。

また日本から遠く離れた国々に、同じ理念で活動している仲間がいることはとても励みになります。


世界子ども音楽祭まであと4ヶ月。来日が待ち遠しいですね。


(フランス語の動画ではありますがぜひ現地の様子をご覧ください)



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